ノレバンがつくった「自分の番」という文化
ノレバン(韓国式カラオケ)では、曲を探して番号を押し、前の人の歌を聴きながら自分の番を待つ。1990年代に釜山から全国へ広がった小さな部屋は、音楽を聴く人を歌う人に変え、機械の操作を皆で楽しむ遊びにした。
1991年の釜山
韓国のノレバンの出発点としてよく挙げられるのは、1991年4月の釜山・東亜大学前のロイヤル電子ゲームセンターだ。ただし国際新聞は2018年の歴史記事で、「最初」を裏付ける公式記録は確認されていないと指摘した。特定の日付よりも、釜山で新しい営業形態が現れた時期と捉えるのが正確だ。
ユン・サンギル/チャン・イルの2016年の研究は、1980年代の釜山にすでにあったカラオケ文化と、1990年代初めのコンピューター伴奏機を使うノレバンとの関係を考察している。ノレバンは既存の歌の文化、ゲームセンター式の利用方法、区切られた部屋が組み合わさって生まれた。
機器を設置した商人
ソウル歴史博物館の2010年の都心商工人生活文化調査によると、釜山・嶺南で人気を得たノレバンは1991年末にソウルへ広がった。初期は伴奏と字幕の同期や音響が技術的な課題で、世運商街の商人たちが機器を供給し設置した。
客の目にはマイクと画面が先に入るが、部屋を営業するには伴奏機やアンプなどの接続が必要だった。「カラオケの機械」とひとまとめに呼ばれるものの裏には、複数の音響機器と設置の技術があった。

曲目本とリモコン
番号による選曲は、曲目本でタイトルを探し、対応する番号を機械に入力する方式だ。曲目本の選曲を改善しようとした登録特許にもこの方式が説明されている。曲を選ぶ人と歌う人が違えば、選曲と鑑賞が同じ部屋で同時に進む。
リモコンの「予約」は次の曲を待機させ、「音程」は高さを、「テンポ」は速さを変える。掲載した2008年のクムヨン製リモコンの写真にこれらのボタンが見え、現在のクムヨンのIPTVサービス説明にも音程・テンポの調整と予約曲リストがある。写真は1991年の機械の機能を示すものではない。

電子技術の変化
曲目本やボタンだけを見てノレバンをアナログ文化と捉えると、技術の歴史が見えにくくなる。TJの沿革には、1989年の家庭用コンピューター伴奏機、2002年のハードディスク式動画内蔵伴奏機とインターネット伴奏機の発売が記録されている。
1995年の電子新聞のインケル新製品報道には、遠隔操作や照明制御、外部のレーザーディスクやビデオテープの映像を背景に使う機能がすでに登場する。ボタンは変わらなくても、その裏の電子機器は変わり続けた。

部屋の中の聴き手
ノレバンではマイクと同じくらい扉と壁が重要だ。区切られた部屋では、一緒に入った人が聴き手になる。歌唱力だけでなく、曲を選び、順番を待ち、相手の歌に反応することも体験の一部だ。
誰にとっても気楽な空間とは限らない。一緒に歌う楽しさと人の目を意識する負担は両立し得る。「韓国人は生まれつき歌好き」という説明より、誰が一緒にいて誰が順番を決めるかの方が具体的だ。
掲載した2014年の光州の写真では、マイクを持つ人とリモコンを持つ人が同じソファに座っている。歌と選曲という二つの役割が一つの部屋に共存する場面だ。
コインノレバン
コインノレバンは昔の店を小さくしただけのものではない。時間単位で部屋を共有することと、歌いたい曲数だけ短く立ち寄ることでは時間の使い方が違う。国際新聞は2018年の釜山・水営区での取材で、一人で来て選んだ曲を歌う客を記録した。一人カラオケは最近急に生まれた流行ではない。
一方で、団体利用が個人利用に完全に置き換わったわけでもない。一緒に遊ぶ部屋と一人で練習する部屋は、異なる需要に応えている。
2006年の写真はゲームセンター内に小型の歌うブースを設けた姿で、2010年代のコインノレバン専門店とは異なる形態だ。

現在のノレバン
TJ A3の公式説明には、アプリによる曲の検索と予約、録音コンテンツの確認、コイン・時間制の管理機能が紹介されている。機能の存在を示す資料で、すべての店が同じ機器を備えているわけではない。曲目本をめくっていた選曲は、別の入力方法へと続いている。
部屋の形もさまざまだ。韓国観光公社の2023年の弘大の店の紹介には、通りから中が見える全面ガラスの部屋が登場する。ボタンや画面が変わっても、「次に歌う曲」を選ぶことは今もノレバン体験の中心にある。
出典・基準情報
2026-10-13T23:37:28.396Z
Sangkil Yoon and Il Chang, Social Contexts and Media-Historical Meaning of the Early Noraebang Culture in Busan, 2016, pp. 164–199 ↗Kookje Shinmun · Noraebang history, January 2, 2018 ↗Seoul History Archive · Different types of karaoke machines, 2010 living-culture survey ↗Patent KR100764820B1 · Description of songbooks and number-based selection ↗Kumyoung Entertainment · IPTV song-selection, key and tempo functions ↗TJ Media · Company history ↗Electronic Times · Inkel accompaniment-system launch, June 19, 1995 ↗Kookje Shinmun · Reporting on solo and coin karaoke, January 2, 2018 ↗TJ Media · A3 official product information ↗Korea Tourism Organization · Room culture, October 17, 2023 ↗Original photo and rights: Catherine, Korean karaoke remote, Epping, Australia, 2008, CC BY 2.0 ↗Photo source and rights: cezzie901 · 2014-09-20 ↗Original photograph: cezzie901 · 2014-09-20 ↗Photo source and rights: Kai Hendry · 2006-07-11 ↗Original photograph: Kai Hendry · 2006-07-11 ↗Photo source and rights: Catherine / Sailor Coruscant · 2008-10-03 ↗Original photograph: Catherine / Sailor Coruscant · 2008-10-03 ↗Photograph licence: CC BY 2.0 ↗2008年10月3日、オーストラリア・エッピングの韓国式カラオケ店で撮影された金永KRC-D8000リモコンの操作部です。番号入力、予約、開始・取消、キー・テンポのボタンと下部のKY表記が見えます。写真:Catherine。原題:“Karaoke”。撮影 2008-10-03、公開 2008-10-30。出典:https://www.flickr.com/photos/sailor_coruscant/2986745144/ ライセンス:CC BY 2.0(https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/)。原本の上端320ピクセルを切り取り、2560×1600の操作部詳細画像として可逆圧縮のWebPで保存しました。拡大縮小・色の変更・変形はしていません。カードと拡大リンクは同じ詳細画像を表示し、切り取る前の原本は出典で見られます。韓国の1991年の機器を示す写真ではありません。
2006年7月11日に撮影されたゲームセンターの小型カラオケブース。撮影者の所在地タグは「korea」で、店舗名は不明です。写真:Kai Hendry、CC BY 2.0。 写真:Kai Hendry。原題:“Karaoke booths at a games arcade”。撮影 2006-07-11、公開 2006-07-13。出典:https://www.flickr.com/photos/hendry/188500849/ ライセンス:CC BY 2.0(https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/)。原本ファイルは変更・縮小していません。 カードは8:5の中央トリミング表示です。拡大するとファイル全体を見られます。1990年代の資料写真や2010年代のコインノレバン専門店の写真ではありません。
1994年に大興電子が製作したカラオケ伴奏機アリランIII(DH-1000)。前面に曲番号用の数字ボタンと予約表示窓がある。写真: 国立民俗博物館 / ノレバン機器(068194) / 国立民俗博物館所蔵品 / 公共ヌリ第1類型
オーストラリア・エッピングの韓国式ノレバンで使われた金営(KY)のリモコン。数字キー、ハングルキーボード、「予約」「予約取消」「優先予約」「開始」「取消」ボタンが見える。写真: Catherine from Australia / Karaoke / Wikimedia Commons(Flickr) / CC BY 2.0
番号を入力して歌えるサミック音響の携帯型「コンピューター歌伴奏機」。数字・音程・速度調節ボタンとカセット挿入口があり、曲名と番号を収めた冊子が付く。写真: 国立民俗博物館 / コンピューター歌伴奏機(048389) / 国立民俗博物館所蔵品 / 公共ヌリ第1類型

